Activity Detailed Report
活動報告・詳細
南大隅応援レポート[第3弾]
ますます盛り上がる! 九州本土最南端《南大隅》
昨年(2016年)2月12日(金)~ 14日(日)の鹿児島・大隅半島「食・自然・歴史ロマンの再発見の旅」では、本土最南端の「佐多岬(さたみさき)」にある「御崎神社(みさきじんしゃ)」を訪問し、1300年も語り継がれたという神秘的な祭りを取材しました。あれから1年。「この面白い祭りをもとに映画作りができないか?」という話もあり、今回は映画製作関係の皆さんとともに、2月17日(金)~19日(日)まで、再び「南大隅」を訪れました。
今回は、祭りはもとより「地元・南大隅の皆さんの活躍」と、皆さんとの「ふれあい」をテーマに、鹿児島県で唯一の自転車競技場、精力的に活動されている畜産農家、佐多伊座敷の銘菓店などをご紹介します。
「御崎祭り」に欠かせない温かいおもてなしと絶景
「御崎祭り(みさきまつり)」は、御崎神社に祀られている妹神を、霊木として崇められるミサキシバに乗り移らせ、それを神輿に乗せて20㎞離れた近津宮神社(ちかつのみやじんしゃ)に祀られている姉神の元へ正月の挨拶に行くという祭りです。神輿の前を尾浪瀬集落の若者が持つ鉾が、後ろを外之浦集落の若者が持つ赤い傘が続き、途中で7つの集落(7浦)を巡幸しながら、「郡集落(こおりしゅうらく)」にある近津宮神社へ到着します。鉾と傘は、この集落の若者しか持てないというしきたりになっているそうです。各集落では、この妹神にできるだけ長く滞在してもらいたいという思いで、お酒やご馳走をふるまいます。
尾浪瀬集落の若者が持つ「鉾」姉神の元へ向かう「神輿」外之浦集落の若者が持つ「傘」
御崎神社への入り口にある「田尻集落」では、神官や奉賛会の皆さんは必ず、その地のリーダーである柳川勝巳さん・スミエさんご夫婦のお宅を訪問して、ご馳走をふるまっていただいた後に御崎神社へ入って行きます。私たちも早朝の5時半過ぎに柳川さん宅を訪問しましたが、奥様が数日前から心を込めて作られた蒲鉾、薩摩芋の揚げ物、赤飯、ウツボ料理などをいただきました。今回同行した皆さん、この手作り蒲鉾やウツボ料理のおいしさに大満足で「まるで、ウツボ食堂だね!」という感想も出るほどでした。
柳川勝巳さん・スミエさんご夫婦のお宅を訪問独特の食感のウツボ料理
地元の皆さんの心づくし日高みす子さん(右)また、田尻の御旅所では、ミサキシバを神輿に乗せる神事の間にも、地元の方々にカンパチの酢の物やおにぎりをふるまっていただきました。さらに、佐多岬ホテルでも、このホテルで働いておられる日高みす子さんほかの皆さんから、本当に温かいおもてなしをいただきました。当日は好天気に恵まれたこともあり、温かいおもてなしとあわせて佐多岬周辺の景色が、よりいっそう美しく観えました。
細かな砂浜が広がる「浜尻海岸」翌日は、郡集落の旧郡小学校(現在は廃校)の校庭に屋台などが出店して、たくさんの人で賑わっていました。ここから1㎞ほど下ったところに「浜尻海岸」があり、美しい砂浜が広がっていました。そこから種子島と屋久島が見えたことには感激しました! 皆さんには、ぜひ一度、訪れていただきたいオススメの場所です!面白い発見もありました…それは、錦江湾(きんこうわん)寄りの海岸には直径1m~2mの丸石が点在しているのに対して、太平洋側は微粒子のような細かな砂浜が広がっていることです。これはなぜなのか、一度、地質学者の方に調べていただきたいと思いました。
鉾・神輿・傘が近津宮神社の鳥居を潜り抜ける景色を堪能していると、神事が始まりました。そしてクライマックスの、鉾・神輿・傘が近津宮神社の入り口の鳥居を潜り抜けて90度方向転換して階段に向けることに成功すると、観客から大きな拍手が沸き起こりました。30㎏ほどの重さがある鉾と傘を、姿勢を低く維持しながら境内まで登りきる体力は相当なものです! 登り切った境内では、田おこし神事や剣舞などが行われて奉納されます。本来、この祭りは2月19日に行われたそうですが、最近は3月19日以前の土曜・日曜に行われるようになりました。この行事が終わると、この地方に春が訪れます。
「すんくじら」から世界へ
南大隅町には「鹿児島県根占自転車競技場」があります。ここは鹿児島県で唯一の自転車競技場です。訪問した19日は「オムニアム」という競技が行われていました。オムニアムは、2日間にわたって開催され、合計で6種のトラック種目を行って順位を競うゲームです。地元の南大隅高校や鹿屋体育大学のほか、都城工業高校、延岡学園、さらには数名の中学生も参加していて、大会は大いに盛り上がっていました。ここは高台にあるために夏も涼しく、また、大隅半島は自転車練習に適した道路があることなどから、県内の自転車部の練習の場として非常に人気があるとのことです。
鹿児島県で唯一の自転車競技場このようにトラック競技の環境が整っていることから、南大隅高校も鹿屋体育大学も、全校では常にトップクラスの成績を収めています。また、プロ選手も多く輩出しており、オリンピック選手も誕生しています。昨年のリオオリンピックに出場された塚越さくら選手(埼玉県出身)は、鹿屋体育大学から頭角を現したひとりです!
南大隅高校は、学校の近くに学生寮を整備したことで、九州各地からも入学希望者が増加しています。2020年の鹿児島国体の自転車競技も、この地でで開催される予定で、今後、競技場も改修されて、ますます環境が整っていきます。「すんくじら」の南大隅から世界へ羽ばたく選手がたくさん出てくることに期待します!
日本一周を目指す友星君
佐多岬ホテルで、たまたま出会った自転車で日本一周を目指す大学生・友星(ゆうせい)君は、宮崎から来たとのことで「大隅半島は景色も良くて走りやすいです」と、うれしい評価をしてくれました。
※「すんくじら」は、鹿児島弁で「端っこ」や「隅っこ」という意味です。
南大隅ウインドファームと畜産農家のコラボ!
20基のドイツ製の風車が整然と並ぶ「パノラマパーク西原台」はパラグライダーが楽しめることで知られていますが、近くには開聞岳(かいもんだけ)や錦江湾を一望できる九州電力の根占発電所と佐多発電所があります。直径60mもある3枚羽根のドイツ製風車が、合計20基も林立している景色は圧巻です!ここで作られた電力は、一般家庭や畜産農家などに配電されています。この地域の周辺には大規模農場や個人経営の農場が点在していますが、自然環境を重視する養豚・養鶏・養牛農家では、このクリーンエネルギーが活用されています。
ここでは「南州農場」と「永吉農場」と「拓大ファーム」の、3軒の農場を訪問しました。
南州農場
この農場を拓かれた本田信一代表は、もともとは海外航路の一等航海士とのこと。「何か変わったことがしたい」と思われて畜産を始められたのが40年前で、豚20頭でのスタートが、いまや40,000頭になり、加えて牛も1,200頭を扱う大規模農場となりました! 博多・鹿児島市内・鹿屋などでは、直営店も経営されているとのことです。お話をうかがった北九州出身の柿元博史理事は「最初は1~2年程度だろうと思って手伝い始めたのが、40年も経ってしまった」と。また、地元出身の重信一明さんは、学生時代に農業を学んでUターンして就職して以来35年とのことですが、おふたりとも「自分たちが、これまで大きくしてきた」という自信にあふれていました。
南大隅の雄大な自然に囲まれた環境のなかに位置する「南州農場」
この農場は「生産→処理→加工→販売」と、一貫した経営を手がけておられ、まだまだ人材を確保したいとのことです。けれども地元の若者たちは、やはり一度は都会に出たいという人が多く、新卒者が少ないのが現状だそうです。しかしながら、20歳代の中途採用者は結構いらっしゃって「Uターン組」が多いとのこと。そのために、働く環境を整えることは重要で、住宅を手当てしてあげることは大きなポイントだそうです。また今年は、海外からの人材を採用する予定とのことです。なお、ちなみに当農場にいらっしゃる獣医のおふたりは関東出身とのことでした。
お話をうかがうなかで、この地域は田畑より畜産業に適しているので「地域とともに考え、共に歩む」ということを原点に、未来を見据えて拡大を図り、地元の経済発展の一翼を担う責任を果たしたいという皆さんの強い思いを感じました。
永吉農場
永吉卓也さん永吉農場この農場は、永吉敏春さん・卓也さん親子と親戚の方々の数名で経営しておられます。それぞれが50頭ずつの黒牛を飼育しており、経営もそれぞれで行う方式を採って、親子で切磋琢磨することで、さらなる発展をしたいとおっしゃられます。
前夜に生まれたばかりの子牛何と、ここでは前夜に生まれたばかりの子牛と対面でき、2日目にして必死に立ち上がろうとする子牛を見ることができ、一同、大感激でした! この子牛も9ヶ月ほど経つとセリにかけられるとのことですが「それまで間は、優しく育てていきたい」と息子の拓哉さん。大きな体に似合わず(?)心優しい笑顔が印象的でした。
拓大ファーム
拓大ファームこちらは川原拓郎さん・慎之介さん親子、そして弟さん方も一緒に経営に携わっておられ、200頭ほどの牛を飼育されていました。自分たちの牛のほかに、一部は大規模農場から預かって飼育しているそうです。ここでも生まれたばかりの子牛と面会できました!
慎之介さんは、人工授精士の資格も持っており、所有する牛の頭数が多いため、立て続けに分娩に立ち会う時もあり、睡眠時間を削って対応されているとのことです。「たいへんだと思う時もありますが、元気な牛が育ってくれたら嬉しいし、夢も膨らみます!」とおっしゃいます。
「畜産業は、かっこいい」と頑張る!この農場では、飼料の一部をカナダ・ニュージーランド・オーストラリアから輸入しており、為替の変動が気になるとのことでした。いま畜産業は、子牛の価格も上がっていて「良い環境」にあるようです。かなり国際化も進んでいると感じました。若い畜産家も増えてきているそうで、「畜産業は、かっこいい仕事だ」と思って頑張っている人が多いなと感じました。
台湾・香港で注目! あこがれの美しい景観
神秘的な樹木「ガジュマル」本土最南端からの雄大な景色日本全国どの地方へ行っても「人口減少」は悩みの種であると思いますが、ここ「南大隅」では、地元の人たちが精一杯努力している姿を、あらゆる所で見ることができました。
観光の名所として、本土最南端・日本最古の佐多岬灯台を一望できる展望所の建設や、北緯31度線の場所に「新たな展望台」の設置が進められています。整備が進む展望所で記念撮影一部は完成しており、そこから見える景色は素晴らしいものでした。竹島や硫黄島も見えるようになりました。
「雄川の滝」は、エメラルドグリーンの美しい滝壺や周辺の景観によって、いまや台湾・香港では「日本で行ってみたい美しい景色」ランキングの上位にランクされていると言われます。
台湾・香港からの旅行者が「一度は行ってみたい!」という「雄川の滝」エメラルドグリーンの滝壺の前で
昨年の台風の影響で、散策道路の工事が少し遅れたようではありますが「1,200メートルの遊歩道」は半分まで仕上がっています。完成が待ち遠しい限りです!このように「南大隅」は、町がしっかりとしたビジョンを持っていて、ひとりでも多くの人々を、この地に呼び込みたいという意欲にあふれていました。
隠れた銘菓店! 佐多伊座敷「丸安菓子舗」
今針山安二さん・キミ子さんご夫婦が頑張る銘菓店佐多伊座敷(さたいざしき)の坂の途中にある「丸安菓子舗」は、80歳になる今針山安二さん・キミ子さんご夫婦が経営されています。「手作りボーロ」は、一度食べた人からの口伝えで人気沸騰中! 注文が殺到していて、それをこなすのにてんてこ舞いで、商品をショーケースに並べる暇がない! 確かに、私たちが訪問した時にはショーケースはカラの状態でした! 「先日も2,000個の注文が来て、夜も寝ずに作って出荷したよ」とご主人の安二さん。
龍眼もなか手作りボーロ東京からの訪問で何も持って帰れないのも気の毒なのでと、急いで「手作りボーロ」を焼いてくださり、できたてホヤホヤを頂戴しました! また、「龍眼もなか」は、全国菓子博覧会で金賞を受賞! ショーケースに1箱だけ陳列されていましたので、即購入!
後継者がいないのが悩みとおっしゃる安二さん。「でも、やれるだけ頑張る!」と、ますますお元気です!
今回は、たくさんの地元の方々と交流でき、皆さんの「南大隅に多くの方に来ていただきたい」という情熱を肌で感じるにあたって「大隅半島の"すんくじら"にも、こんなに元気に頑張っている方々がおられるんだ!」ということを実感できた良い旅になりました。
これまでの南大隅応援レポート
[第1弾]2016年、いよいよ旬に! いま注目の鹿児島「隅におけない《大隅半島》」詳細はコチラ
[第2弾]隅におけない大隅半島「食・自然・歴史ロマンの再発見の旅」詳細はコチラ